恋人を家に送って帰る道 (Walkin’ My Baby Back Home)
恋人を家に送って帰る道 (Walkin’ My Baby Back Home)
恋人を家に送って帰る道 (Walkin’ My Baby Back Home)
1953年、ロイド・ベーコン監督作品。日本未公開。
主題歌がヒットしたというよりは有名曲のタイトルを頂いて作ったミュージカル。軽いリズムに可愛い歌詞、いい曲です。帰りのエレベータで乗り合わせたオジサンは口笛で吹いてました(笑)

除隊後、戦友たちと作ったバンドで売り出そうとするジガー(ドナルド・オコナー)。イマイチ客に受けず一時は解散となるが、ディキシーランド・ジャズのテイストを盛り込み、旧知の美人歌手クリス(ジャネット・リー)を加えて再出発を試みる。今度は成功しそうに思え、クリスとも相愛となったところで、ジガーの実家から横槍が。

彼は実は名家の次男坊なのだが、一時的に一族の会社経営が揺らいでおり、最近逝去したオペラ好きの祖父の遺書にあった「孫ジガーがオペラ歌手デビューを果たしたら遺産10万ドル!」というのを家族全員期待していたのだった。但しジガーは、かつて祖父につけられた先生のレッスンは内緒でサボりまくり、ろくに勉強していない(笑)
それでも母親を泣かせるに忍びず、期限を切られたオペラ歌手デビューに、バンドデビューより先に挑戦せざるを得なくなったジガーは、理由を知らないクリスや仲間から「バンドは結局ボンボンのお遊びだったのか」と総スカンを食う(社の経営危機は誰にも言うなと口止めまでされたため)。親友ブリンプ(バディ・ハケット)だけは、理由があるんだろ、と協力してくれたが、付け焼刃の猛特訓がたたってか、開幕直前にジガーの声が出なくなって更なるピンチ!事情を知って駆けつけてきたバンド仲間たちは、バックにレコードを流して口パクで誤魔化そうとする。当然すぐバレるのだが、ようやく声の戻ったジガーは舞台で強引にバンドを紹介、演奏が始まるとこちらは大受けして、どうにかこうにかハッピーエンド(多分)。

かなり無理のあるシナリオですが(普通音楽関係者だったら、口パクでも「あれはパヴァロッティの声と似すぎだ」とか何とか気づくのでは?)、まあそれはいいです。ミュージカルだし。
ディキシーランドまでがイマイチ盛り上がらないのも、バンドがウケないんだから仕方がないと思ってあげよう(監督が寝ぼけていたのかもしれない。後半のテンポはgood)。
最終的に魅力的なナンバーが多数入っていてくれれば私は許す。許すけど…
惜しいんだよね。

リアル背景でのナンバーは良いんだけど、ミンストレルショーの舞台の背景絵とか、夜道を歩いてて踊り始めると突然周囲は二人占有の遊園地…とか、舞台でのフィナーレ(ありえない舞台装置転換が…いや、そういうのはシネミュージカルにはあって普通なのだけど、何となく普通より説得力不足というか文法的に唐突というか…)とか、人工的なセットになるたび趣味がイマイチで踊る二人の魅力が減じている気がする。ミンストレルショーは客の入りが悪くて潰れるのでショボくて構わないのかもしれないが、オコナーとリーの二人が黒塗り+ど派手色彩な上に、バックがごちゃごちゃしすぎて踊りがよく見えない…
やっぱユニヴァーサル・クォリティなんでしょうか(涙)。

特に、フィナーレで「残念」を感じるのは痛い。最終的には本来(リアル)の服装(タキシードとドレス)で舞台上に戻って美しいデュオダンスを見せてくれるのだが、ヘンに舞台装置の陰とか作らず、主演二人の美しい身体と動きのラインをもっとよく見せてよ~、と言いたくなる。
そのくせ、あーんこのナンバーもう終わるの、とか思わせられる事が何度もある。付け焼刃でどのくらいオペラ歌えるようになったのかも聴きたかった(笑)

とまあ、文句はこれくらいにして、舞台装置がヘンに凝ってないナンバーは、逆にどれも魅力的だ(タイトル曲でオコナーとリーが踊る遊園地だって、まあそこそこロマンティックではある)。レコードショップの仕事を早くやめてバンド練習に専念しようよ、とオコナーがリーを誘って歌い踊る"Band Wagonなんとか(正式タイトル不明)"。新生ディキシーランド・シンフォニック・バンドの"South Rampart Street Parade"も歌メインだが盛り上がる。そして圧巻は、誤解して仲間が去った後、からっぽの練習場で、乱れる心をぶつけるように、激しい勢いでオコナーが踊りまくるソロタップ。ピンクのシャツに白パンツがお洒落…いやそれはともかく、明るいイメージのオコナーには珍しいシリアスなダンスナンバーだが、見事な表現力を見せてくれたと思う。やっぱりイイなあオコナー、と見惚れた。このナンバーまできて、絶対もう一度見てから帰る、と覚悟がついた(二本立てなのでのべ三本見れるか少し不安で予定決めずに来てたのだった)。
そう、もっと踊り手の力に頼れ、というか、小手先でなくストレートに踊りを堪能させてくれればいいんだよねえ。MGMみたいにゴージャスにやれないなら。

音楽シーンでは、スキャットマン・クロザーズも非常にいい味でした。ピアノ弾き語りの"Honeysuckle Rose"は物語を上向きにするポイントの曲でもある。この人TVの"Colgate Comedy Hour"でオコナーと一緒に"The Birth of the Blues"をやってた筈。この番組でオコナーと音楽コントをやってたシド・ミラーも音楽事務所のボス役で出ていた。こちらは何も芸をしなくて残念(笑)

色々文句も書いてしまったが、脚本もゼンブがダメというわけではなくて、いい場面もちょこちょこある。ジガーの実家から逃げ出したクリスをジガーがタクシーで追いかけるくだり(彼女は彼に好意を抱いているが、家柄の差を最初から気にしている)は、運ちゃんたちの会話も洒落ててお気に入り。オペラの特訓シーンも笑える。今回の主人公は根がボンボンなので、なんか凄くのびのび育ちましたーって感じのオコナーの役作りは納得の出来。バディ・ハケットの三枚目ぶりは…うーん。まあ憎めない感じではあるかな。最初の中国人ウェイターのマネはイマイチでしたが(私も東洋人だし)。その次のナンバーも中華風なんで、コレのせいで複雑な気分に。

それにしてもジャネット・リーは巨乳だなあ。ウエストもグンと細くて昨今の「ぱっつんぱっつん」て表現はこういのをいうのだろうか。


…なんだかだいっても…色々、来るの大変だったけど…来てよかった(*^^*)。
シネマヴェーラさんありがとう。
若々しいオコナーの、清新で端正なダンスが見れて満足です。

ちなみに併映は1939年のアルゼンチン映画「君を呼ぶタンゴ(La Vida de Carlos Gardel)」という聞いたこともないモノ。実在の歌手カルロス・ガルデルという人を主人公にした音楽映画、音楽メロドラマでした。71分だから「恋人を…」二周目が始まるまで頑張って付き合うことに。幼馴染の、ずっと結ばれなかった恋人が病の床でラジオで彼の歌を聴きながら死に、番組を終えたカルロスも飛行機に飛び乗って彼女のもとへ向かおうとしたとたんに飛行機事故にあって彼女のあとを追ってしまうというラストは…絶対、史実とは違うんだろうなあ(^^;)
でも、じつはちょっとウルっと来てしまった私でした。お恥ずかしい。たまに、こういう古風で直球ど真ん中なメロドラマを見るとほろっときちゃいますね。普段あまり見ないだけに?
清純派なヒロインも、一時カルロスの売り出しを助けてくれて彼とデキてしまうギャングの情婦?な裏ヒロインも、それなりに魅力的でしたし。


<追記>"Walkin’ My Baby Back Home"のDVDを、正規盤でもなく画質もガタガタだがLovingtheClassics.comで入手した。嬉しいッ★

いつのまにかYoutubeにもいろいろあがっていたのでリンク。ナンバー数はかなり豊富でこれでもほんの一部。

http://www.youtube.com/watch?v=hoqbBb9lR2Q

http://www.youtube.com/watch?v=I7KMmWW69rE

http://www.youtube.com/watch?v=SLJC1EAreAQ

http://www.youtube.com/watch?v=Lfiyns-nZ-M

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