六番目の男
六番目の男
六番目の男
1956年、ジョン・スタージェス監督作品。カラー。

84分の小品ながら、カラーだし善人のヒーローだし、西部劇かつ監督あのスタージェスだしでウィドマークファン必見の作。なのに国内では、DVDもVHSも…(涙)
海外盤は英仏独スペインと各国で出ているのにな(但し英語字幕はどれもなし)。しびれを切らして仏盤買ってしまいました、特典にウィドマーク・インタビューがあったから。字幕は仏語(爆)


アリゾナ、ヒーラ谷。かつてアパッチの襲撃で5人の白人が命を落とした場所だ。ジム(リチャード・ウィドマーク)が焼け跡を掘り返している所へ、馬に乗ってキャリル(ドナ・リード)が通りかかり、言葉をかける。
あなたも金を探しているの?
だが彼が捜しているのは、5人を見殺しにし5万ドルの金を独り占めして逃げた「6人目」の手がかりだった。

5人の死者のひとりが顔も知らぬ父だと信じ、仇を探す男。
5人の死者のひとりが失踪した夫だと信じ、金を探す女。
勝気でミステリアスな女と、斜に構えているようで物堅い男。
彼らの道は行く先々で出会い、二人は共に旅することになるが、死者の素性を確かめつつ進むうち、「6番目の男」は彼らの夫か父か、どちらかだと分かってくる。女は男が傷つくことを恐れて「もうやめよう、一緒に引き返し静かに暮らそう」と訴えるが…

ミステリー・タッチの複雑な筋立てをコンパクトにうまくまとめて、オトナの恋模様もイイ感じに描かれている。5万ドル狙いの兄弟が次々と襲ってくるわ、アパッチは暴れるわ、牧場同士の抗争に巻き込まれ、癇性の若いガンマンにも狙われるわ、と、アクションやガンファイトは素晴らしくもりだくさん。ウィドマーク様のキビキビとした身ごなしと運動神経が堪能できます☆
また馬車と並走する馬上で振り返りながら撃ちまくり、とか、思いがけないタイミングでふらっと酒場に入ってきてガンファイト、とか、人の銃でガンファイト、とか、いろいろ目先を変えてあるのが楽しいね。

殴ったり、いきなりキスしたり、殴り返されたり、と、ラブシーンの方も「拾った女」以来の華々しさ(笑)。だが、荒っぽく扱いつつも女の純情にほだされる「拾った女」とは逆に、今作ではニヒルなようでどこか無防備(父の事で悩みが尽きないからか)な男に、勝気な女がほだされるという構図。何度か女に「ハメられた?」と疑ったりしつつも、結構「あんた美人だしな」で済ます投げやりっぷりとか、幼い頃別れて顔も覚えていない父親を「どんなだろう、と思ってしまうのは不思議な感じだ」と照れをにじませて呟くのとか、確かに母性本能くすぐられますわホント。意外にアッサリ牢屋にぶち込まれたりするのにも…(爆)。
金のことしか言ってなかったキャリルが、最後には全くそんなこと口にしなくなるのも無理ないです。でもひょっとしたら彼女、本当は元々金より夫がどうなったのかの方が気になっていたのかもしれない。
そんな気にさせるほど、終盤の彼女は突っ張った中にも誠意あふれる好演です。

夫が彼女のもとに帰ってこなかったのは南北戦争後のごたごたによるらしい。
南部アトランタ育ちのキャリル、テキサス生まれでやはり南軍で戦ったらしいジム(銃の腕はそこで磨いたのか?)、…西部劇に南北戦争はやはり効果的なスパイスだ。

苦みと救いの微妙なバランスのエンディングまで、息もつかせぬアクションとサスペンスと恋。
ジョセフ・ガーシェンスンの音楽も悪くない。サスペンスフルで、ラブシーンは甘くと的確。
いやー、これなら何度見ても飽きない楽しさですな。
よかったよかった。でもやっぱり日本語字幕版くらい出せばいいのに日本のメーカーも~。


ちなみに、ミステリー・タッチなのはフランク・グルーバー原作なため(だいぶ脚色されてるらしいけど)。この人のミステリは少し読んだけど、ユーモアがあって結構面白いです。西部ものだけでなく、セールスマン探偵とかね。セールスマンだけあって口がうまくて図々しいんだな(笑)…ウィドマーク様に演じてもらうのにぴったりだったかもしれません、こっちも。

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