昔気質のヤクザ組長・大名大作(伊藤雄之助)が3年ぶりに出所し、自分のシマに戻ってみると、そこは新興ヤクザの矢東(中谷一郎)に乗っ取られていた。怒りに燃える大作は、子分志願者の太郎(砂塚秀夫)に万年筆型の爆弾を作らせ、矢東を殺す計画を立てるのだが…。(Amazonレビューより)
1964年年、岡本喜八監督作品。モノクロ。
スカパー録画を、金曜の晩に半分見て、土曜の晩というか12時過ぎて日曜になってから見た。日々の寝不足でつい船をこいだが(あぶないあぶない!)、ハッと気づいて巻き戻し、最後まで一挙に観た。…3時だよ…ああ…
…しかし…
聞きしに勝るヘンな映画であった…(笑)
和製ミュージカルってきいてたけど、そりゃ嘘だ。
音楽映画と呼ぶことはできるかもだが、上にあるような大筋を、能狂言・歌舞伎に文楽、アホダラ経と、現代劇なのに伝統芸能や和事の節回しと所作を強引かつ好き勝手に取り入れた演出で進んでいく。(時々、字幕まで出る)
怪優・伊藤雄之助、冒頭いきなり囚人服で謡いはじめ、“太郎冠者”を呼びつける。さっそくまかりいでるのが砂塚秀夫(役名も太郎)、ふたりの狂言風演技が結構キマってるのが摩訶不思議な楽しさである。砂塚秀夫って、Wikiで見ると日本舞踊の素養もあるんだってね。なるほど若い(少なくとも伊藤よりは)のに足運びだの身のこなしだのがキマってる筈だ。服は囚人服だけど。そういや、先日の「戦国野郎」でも妙にリズミカルで可笑しな動きでアクションしていたなあ。地味だけど凄い人なんだなあ。
そして、逆に新興ヤクザで『社長』を名乗り市会議員選挙に打って出ようという、今風にキレてる中谷一郎とその手下ら主人公と敵対するメンツや銀行員らは、ジャズやツイスト、ポップスのリズムにのせて行進したり踊り狂ったり。
スラプスティック音楽映画とでもいうべきか。
普通に現代劇として会話をかわしあってる部分と、それ以外が入り混じってるが、音楽パートや伝統芸能な部分とそれ以外が、思ったほどには乖離していないのが大したものかも。
…というよりも、あっけにとられてシラける間もない(^^;)
こんな実験作?まで撮ってるんだなあ岡本喜八って…
いやーびっくりしました。
この監督もともと映像のリズムで笑いをとるところは多かったと思うんだけど、それを突き詰めた怪作奇作。ほんとに面白かったか迷うところはあるけれど、そのうちもう一度見直してみたいと思うかもしれない…(思わないかもしれない…)
ちょっと採点不能だな、このコメディ(苦笑)
私も最近文楽に目覚めたりしたから、多少入りやすくなったのかもしれないが、変わった映画を見たい人には、この映画はオススメかも。
伊藤雄之助の、デフォルメされつくした表情演技を見ているだけでも飽きないのは確かです。