絶壁の彼方に
絶壁の彼方に
絶壁の彼方に
1950年、シドニー・ギリアット監督作品。

学生時代、和田誠さんが著書の中で熱く語っているのを読んで以来のアコガレであった懐かしの英国冒険サスペンス。
さるお方のご厚意により、ついに見ることができました。
ハイ、噂にたがわず楽しかったです(*^^*)

ヨーロッパの架空の独裁国家ヴォスニア。新たな術式開発を称える叙勲のためにと招かれた米国人医師マルロー(ダグラス・フェアバンクス・Jr)は、三つの大臣職を兼ねるヴォスニアの大物ガルコン大佐(ジャック・ホーキンス)に囚われ、のっぴきならない窮地に陥っていた。
それというのもヴォスニアの国家機密を知ってしまったからだ(原題は“State Secret”)。マルローが「招待」されたのは、実は秘密裏に独裁者ニヴァ将軍(ウォルター・リラ)の手術をさせるためだったのだが、手術の成功にもかかわらず、数日後将軍は併発症を起こし急死する。政情から見て当分その死を隠しておきたいと考えた大佐は、医師の口をふさごうとする。医師はスキを見て逃走するが…

貫録たっぷりのホーキンスと、ちょっと線細めで米国人というより英国人ぽくすら感じるフェアバンクスJrが相対する冒頭から、回想形式で語られ始めるサスペンス。
急にカメラが主人公の目と化して回想に入るあたり、懐かしいテクでニヤリとさせられます。これはワイドスクリーンだとむしろ似合わないですしね。まあこれは数分で、通常の三人称描写に移るんですが。

言葉も通じない異国の街を逃げまどう(言語もそれっぽい架空の「ヴォスニア語」を用意したそうな)、しかも追うのは国家権力てんで公使館等へ逃げ込もうとしても警官が監視していてかなわない。それでも機転を働かせたり、偶然の出会いや間違いを奇貨として道を切り開いてゆく。小説でもそうだけど、やっぱり冒険&サスペンスというと英国製ですねえ。目の離せないノンストップ展開でワクワクです。英国系のコーラスガール・リザ(グリニス・ジョーンズ)や密輸屋テオドール(ハーバート・ロム)の助けを借りて、次第に国境へと迫ってゆく主人公…。手に汗握る中にも、各人のセリフにはニヤリとさせるユーモアもぬかりなく。いやー、確かに私好みです(笑)。
特別好きな俳優が出ていなくても、これだけ楽しめるんですから(爆)

細かく書いちゃうネタバレは避けたいので筋や逃走の工夫はもう書かないでおきますが、ヒロインも結構可愛いし脇もしっかりしてるしで満足の一品。
グリニス・ジョーンズは、凄い美人てわけでもなく一見はすっぱポイけどキュートで素敵。終盤、主人公に惹かれ始めてるけど「どうせ釣り合わないわ」と悲観してる風情をちらちら見せるあたりも見事にハマって可愛いです。ホーキンスの大悪玉だけどやけに堂々としてユーモアまでにじませた演技は最大のポイントでしょうが、ロムの怪演もイカしてました。油断ならない狡猾な男なんだけどグリニス・ジョーンズが気に入って、彼女にはデレっとした顔を見せる。「床屋へ行くたびに君の事を思い出すよ」というセリフは忘れられませんね。「…お前(医師)のことも」とぶすったれて付け加えるので爆笑。医師が逃げ込んだ床屋で上着を取り違えられたのが縁だったので…
チョイ役ですがいかにも冷酷そーな面構えの警官アントン・ディファリングにも、あー昔からこんな役(ナチ将校とか)ばっかりだな、と納得(笑)
もっとチョイ役ですが山男のオジサンもなんか記憶に残る。カーク・ダグラスとチャック・コナーズを足して二で割ったくらい風雪に耐えたよーなゴツい顔の輪郭をしていました(笑)

「絶壁の彼方に」という邦題にも、古き良き…の味わいがあって、いいですねえ。
原題とは全く違うけど雰囲気をよく伝えてくれる。最近はなかなか工夫のある邦題ってないようですから、見習ってほしいところ。

DVD化されてないようなのは本当に不思議です。

お気に入り日記の更新

日記内を検索