1976年、ブライアン・デ・パルマ監督作品。リアルタイムで映画を見ていた頃に映画館でみて以来久々に、スカパーで見ました。録ってこんなすぐ見た映画も珍しいか?よしタイマーちゃんと録れた、と、確認がてらスタートさせたらウッカリ最後まで一気に見ちゃいました(^^;)
70年代以降くらいに出てきた監督たちの中では、実は結構デ・パルマって好き。ヒッチコックとの類似、というかリスペクトがありありな凝った映像で有名ですが、ヒッチの変態ぶり(以前ここのコメントで、変態じゃなければ芸術じゃない!みたいな話もありました(笑))に比べると、段違いにデ・パルマの変態ぶりの方が私の肌に合うんですね。ヒッチは冷たいけどデ・パルマは熱いです。

そしてオープニング映像。あやしい教会(カメラがだんだん近づいていく)と、ちょっと古くさげな男女の写真とが、バーナード・ハーマンの荘厳で不気味で美しい音楽にのせて交互にあらわれ、もうコレだけでグッとハートを掴まれてしまいます。ヒッチ映画にもお約束だったハーマン、おさすが!の仕事ぶり。実はサントラ盤(LPレコード時代)も買っていた私、あっという間に音楽にとりこまれてしまいました。原題は「愛のメモリー」なんて可愛らしいものではなく"OBSESSION"。そう、これは、結構歪んだロマンチック・スリラー。

不動産会社の社長マイク(クリフ・ロバートスン)は、亡き妻エリザベス(ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド)に生きうつしの娘サンドラ(ビュジョルド二役)に出会い、プロポーズする。エリザベスは16年前、当時9歳の娘エイミーと共に誘拐され、警察の追跡が裏目に出て犯人の車ごと爆死したのだった。マイクはエリザベスとサンドラを些かごっちゃにしているようだが、サンドラは案外気にしていない様子(それもちょっと変)。ところが結婚式の前夜、またしても何者かにサンドラが誘拐される…

憑かれたような目と薄い微笑を貼りつけて、亡き愛妻にそっくりの女性を求める主人公。もろ「めまい」を連想させてくれます。サンドラとの挙式前夜、彼の見る夢は、エリザベスとエイミーを描いた絵の下でとりおこなわれる結婚式。そしてエリザベスと出会った思い出の教会型ウェディングケーキ(ちなみに彼女らの墓石もこの教会の形!)。歪んでますよ。そして泣けます(^^;)
最後のクライマックス、互いの思いに気づかないまま、全く逆ベクトルの激情にかられて双方から駆け寄る男女二人の姿なんか滂沱の涙(笑)…でまた、ハーマンの音楽がここでもえもいわれず綺麗なんですよねえ。よく考えるとかなり痛いエンディングなんだけど、強引に音楽と映像にねじふせられちゃうというか。

ビジョルドはとても魅力的だし上手い。ロバートスンも地味ななりに意外といい味出してた…

終盤に判明する黒幕の、主人公に向ける悪意の不条理なまでの深さとか、16年もあけて第二幕なんですか、とか、いくらでもシナリオにツッコミどころはあるのですが、悪趣味ギリギリのところでふみとどまった歪み系ロマンは琴線に触れるものが。
あと、ファザコン気味の人間に、よりウケるかもしれん(思い当たるフシありな私)。
デ・パルマ作品の中では「フューリー」と並んで一番好きな部類です。
全作品見てるわけじゃないですけどね…特に90年代以降は見てないゾ…

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