女王陛下のダイナマイト
女王陛下のダイナマイト
ジョルジュ・ロートネル監督作品。カラー。

大昔にTVで見て、あまりにナンセンスな楽しさに、ひっくり返って喜んだ作品。フィルム・ノワールの筈だけど爆笑必至のヘンな話だ。
多分これも、和田誠さんが面白いとどこかで書いてたから見たのだと思う…。
リノ・ヴァンチュラの良さを初めて認識した作品でもあった…

物語の主人公は、足を洗って堅気の実業家になった、元ギャングのアントワーヌ。キレるとついつい大暴れしてしまうが、本人は「キレちゃだめだ、冷静に平和的に…」と、常日頃から、努力はしている。
ある日、昔の仲間に頼まれて逃走資金を融通してやったらのがケチのつき始め。

立て替えた4万フランは、ミシュロンというノミ屋(ジャン・ルフェーブル)から取り立ててくれとのことで、彼を訪ねたアントワーヌは、ミシュロンを襲撃してきた若者とハチあわせ、咄嗟に撃ち返して殺してしまう。実はミシュロンは、英国人ギャング“大佐”とその部下たちに狙われていたのだった。「月賦償還がすむまで待ってくれ」と頼んでも当然彼らは聞く耳など持たず、ミシュロン、アントワーヌ、その旧友ジェフ(ミシェル・コンスタンタン)の行く先々に、銃弾とダイナマイトの雨が降る。「冷静に、話し合いで…」と、忍の一字で逃げ回るアントワーヌの堪忍袋も、やがては切れる時が来て…

「カタギになったから」とグッと堪える元ギャング、てのは、とても普通な設定だ。ただ、テンポの良すぎるスピーディ演出はノワールというよりマンガ。そして何より登場人物たちの描写がぶっとんでる。

まず、英国人ギャングたちのインパクトがすごい。純白スーツにボウラー・ハットのキザなボスは、丘の上に優雅な別荘を構えているのだが、若い部下たちは揃ってモッズ・ファッションに身を包み、暇な時間は毎日テケテケ、エレキギターの音に合わせて踊り狂ってる(ボスが一喝すれば絶対服従だが)。襲撃となれば一糸乱れず、過激にクールに無言で暴れ回るのだが、度のすぎたチームワーク(笑)に加え、ムダにイケメン揃いなのがまた笑わせる。
フランス人の「イギリス人はワカラン」そして「今時の若いモンはワカラン」を煮詰めたような敵設定である(笑)
映画が作られたのは、ビートルズ旋風まっただなか。時代色炸裂な音楽的くすぐりが、今見ると余計に可笑しい。「オースティン・パワーズ」のソウル・ボサノヴァとかピーセラ版「カジノロワイヤル」でガンガンかかるバカラック節とか、それらの破壊力にバッチリ通じるものがあります。私はビートルズ世代じゃないけどサ。
まーそれに、英国人てヘン!、ってのも、案外汎用性のあるくすぐりかも(笑)
英国的ユーモアの奥深さ(奥深すぎ…)には、定評ありますからね…

対するフランス勢はというと、コワモテの癖して「キレちゃダメだ、キレちゃダメだ、キレちゃダメだ…」のヴァンチュラは勿論楽しいし、「オレたち、ヤンチャはもう卒業したよな」な相棒コンスタンタンの肩の力のぬけっぷりも素敵だ。そろそろとメガネ(老眼鏡?)を出してかける所なんかなんともはや。「ラ・スクムーン」で見たとき、どーして主役のベルモンドがこのヘンな顔のオッサンに尽くしまくるのかイマイチ理解できなかったが、ここのコンスタンタンはイイ。とてもイイ。そして疫病神ミシュロンを演じるジャン・ルフェーブル!小心なのに発言にはときたま図々しさ爆裂というバランスがこれがまた素晴らしい。あまりのダメ男っぷりに、いつしかヴァンチュラが放っておけなくなるという、ビミョー極まりない愛嬌?までにじむ。

男三人の逃亡珍道中がユーモアたっぷりに描かれるのだが、やがて逃亡中の三人はミシュロンの元妻を頼る。が、これが意外やイイ女、のミレーユ・ダルク。ソバカスだらけだがキュートでお洒落で凄く魅力的。夫には愛想を尽かしまくってるのだが、夫と正反対なアントワーヌが気に入ったのか彼らを泊めてくれる上、元夫に見せつけたいのかアントワーヌを「シェリ(=ダーリン)」と呼んではニッコリ笑顔の大安売りで、彼を困らせる。
そして、ヴァンチュラを森のお散歩に誘ったりする場面など、場違いに綺麗な映像でロマンチック。

おかしな連中大行進、リアリズムなぞくそくらえ、何やってんだコイツラ~、な、ナンセンス・ユーモア・ノワールでした。
いやー、ン十年ぶりに見たけど、やっぱり楽しかったです。
なんだか妙に風景とか綺麗なのもいいね。
私はフランス映画って苦手だけど、この頃時々作られてる、ナンセンスでお洒落なフランス風アクション・コメディは好きだなあ。
どこか、大好きな「コニャックの男」にも通じる、バカバカしくも楽しい映画でした。

バカバカしいのが好きな人にはおすすめ。
大真面目でオジサンたちがバカバカしいのを演ってるのがすがすがしい☆

ついでに英国産イケメンなお兄ちゃんたちが好きな人にもすすめておこう(笑)
やられ役だけどね。

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