1939年、フランク・キャプラ監督作品。モノクロ。
個人的『それでも民主主義を信じたい』シリーズ第二弾(苦笑)

米国議会上院は各州二人ずつの議員からなる。一人の上院議員の死亡に伴い、後任として突然の推薦を受けたのは地元の少年団の指導者スミス青年(ジェームズ・スチュアート)。実は、もう一人の議員ペイン(クロード・レインズ)と彼を操る州の黒幕テイラー(エドワード・アーノルド)とが、コレなら扱いやすかろうと踏んでの人選だった。
が、理想家肌のスミスが提出した少年キャンプ場建設法案は、テイラーの利権を潤すダム建設法案と偶然同じ地域を対象としていた。テイラーらは邪魔なスミスを懐柔出来ないと知ると、逆に汚職の濡れ衣を着せ陥れる。
尊敬していたペインに裏切られ、失意のスミスはまともに弁明もできず首都を去ろうとするが、秘書サンダース(ジーン・アーサー)の励ましとアドバイスで、捨て身の議事進行引き延ばし作戦に出る…

キャプラ的性善説、民主主義賛美映画ということで、古いし前半はさすがに軽くて調子よすぎるくらいだが、後半は結構キタ。
スミスはかなり極端に「青二才」な描写。首都に着いて議事堂のドームを見た途端、荷物も迎えの人々のことも忘れて観光バスに飛び乗り、建国の英雄たちやリンカーンの彫像を見に行って感動に打ち震える。いきなり国政の場に引き出されたのだし仕方がないところもあるが、かつてスミスの父(正義の新聞編集者で執筆中に背後から撃たれて亡くなったという)とも親しかったペイン本人にまで偽証され「どうしていいかわからなくなって」荷物をまとめちゃったり。
秘書の入れ知恵がないと何もできなかったりするのがある意味新鮮?(爆)

とはいえ、発言を終えるまでは他者が割って入れない(質問は受ける)からと、何時間も何時間も、立ちんぼで声をからしてひたすら演説しつづけるスミスのクライマックスは凄い。入れ知恵によるとはいえ、「舞台」に立ち延々喋り続けるのは彼自身なのだ。引き延ばす間に、地元にスミスが直面した政治腐敗を伝え世論を盛り上げようとの計算なのだが、新聞社主でもあるテイラーはマスコミも握り潰して逆にスミス追放キャンペーンをはり、強引な世論誘導を行う。これがなんとも徹底的。
それでも、「嘘の山にかこまれても」、…僕が闘い続ける限り、誰かが聞いてくれる、と、前のめりに倒れるスミスの姿が…奇跡を呼ぶのだ。

ジミーはさすがにハマリ役の一語に尽きる。辛口の都会っ子だがスミスの純朴さに魅了されるジーン・アーサー(なんか「オペラハット」みたいな役だ)も魅力的。悪に染まりながらも品があり、スミスの正しさにはまだダメージを受ける余地を残すクロード・レインズも難しい役と思うのだが素晴らしくうまい。
しかし何より、実にチャーミングだったのが、ハリー・ケリー演じる上院議長ですね。傍聴席からブロックサインを出す秘書とスミスを微笑ましげに見守り?、スミスの演説を支えた影の功労者かもしれん。笑顔がちょー素敵なおじさまでした(あんまり息子とは似てない気がする)。他にもテイラーにエドワード・アーノルド(「我が家の楽園」のジミー父ですね)、記者にトマス・ミッチェルと、30年代の芸達者がすずなり。偽証する地主も結構見たことあるんだけど誰だっけ。「オペラハット」でクーパーにサンドイッチくれたオジサンだっけ。


奇跡なんてそうそう起こるわけはない。とくにリアルで。それでも。
「嘘の山にかこまれても…」。
ちょっと人工的というかわざとらしさがないわけではないけれど、絶望(と思える事態)のさなかでも、うしろむけはいけない…と、心にしみるメッセージをくれる映画でした。


<追記>
つい青二才青二才言ってるけど、フツーにまっとうに生きてきた人間が、一方的に嘘のかたまりをぶつけられて攻撃されたら、呆然として立ちすくむのは自然だとも思う。そんなこと、フツーの人にはあまりにも、 思いもよらない行為だから…
そこからどう心を立て直すか、だね。

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