月蒼くして

2009年7月25日 映画
1953年、オットー・プレミンジャー監督作品。モノクロ。

先月末にツタヤのネットレンタルお試し無料サービスを申し込んだせいで、今月は映画レビュー日記が増えていたのだが、その最後の一枚。実はコレが本命だった。

プレミンジャーというだけで問題作や実験作なイメージがなくもないのですが、これは舞台劇、それもラブコメの翻案。当時としては刺激的なセリフ(清純そうな娘がsex関連語を連発する)に満ちていて話題になったらしいのだが、今見るとどこが刺激的かは、相手役(♂)の反応を見ないとわかりっこない状態(笑)
それでもテンポのいいセリフのやりとり、人物の出し入れのスマートさは保たれてる。

物語はエンパイア・ステート・ビルから始まる。
若い娘パティ(マギー・マクナマラ)が一人、ビルの展望台の切符売り場と同じフロアのドラッグストアを、どうするか迷うそぶりでウロウロする。店にいた建築家のドン(ウィリアム・ホールデン)が彼女を見染めて、展望台まで追ってゆき、声をかける。“プラトニック前提で”首尾よく夕食を共にする約束はとりつけたが、彼の高級アパートへ立ち寄ったところ、「まあ素敵なキッチン!ワタシがお料理してあげるワ、雨も降り出したし家で食べましょう」という展開になる。

ところが冷蔵庫はからっぽだったので、ドンが買い物に出た間に、珍客到来。実はドンは同じアパートに住む婚約者(ドーン・アダムズ)と喧嘩別れしたばかりなのだが、その父デヴィッド(デヴィッド・ニーヴン)である。娘が「ドンに傷つけられた」と言ってるがどうなってるんだ?…と訪ねてきたのだが、風変わりなパティの言動が気に入り、彼女を口説き始める。夕食は三人でとることになりドンは不満顔。
ドンに未練な婚約者や意外な人物の乱入もあり、楽しいデートの筈が大騒ぎの末ワビしい翌朝を迎えたドンだったが…

いやー、なんといいますか、もう死語ですか?「カマトト」って。
清純なのかアバズレなのか、とめどない地雷まじりのおしゃべりで男を惑わせたじろがせる、オスマシ顔のマギー・マクナマラが素晴らしいです(服装は完全に清純シンプルですが)。さして美人じゃないしグラマーでもないけど、とにかく可愛くて可笑しくて。この役でオスカー候補にもなったらしいですが、オードリー・ヘプバーン(「ローマの休日」)が相手では仕方がない。しかし、カマトト対決とはいえるな…。

そして、前評判通り、小粋で優雅なダメ親父を演じるデヴィッド・ニーヴンがまたとんでもなく素晴らしい!!のべつまくなしにグラスを傾けながら、娘のことは二の次で、…うーん、アンタ何しに来たの?しかもいったい何杯酒飲んでるんだひと晩で…。最初、娘とドンがどんな喧嘩をしたのかよくわからないものだからパティに「キミ、ドンは節操のある男だと思うかね?」「ええ 魅力的よ」「私も魅力はあるが節操のない男と言われる」
…これはその後の彼を完璧に言いあらわしております(笑)
節操はともかく金持ちでイヤミがなくてユーモアと品があって、序盤にパティも「若い男より結婚するなら落ち着いた中年男性がいいわ」なんて言ってたもんだから、ドンとしてはかなり危機感を覚えますわな。

序盤のホールデンの口説きのテクもスマートでしたが、後半はいささかニーヴンにさらわれてます。ゴールデン・グローブ男優賞(コメディ・ミュージカル部門)を獲ったこの作品が、“小粋な中年紳士”ニーヴン最盛期の幕開けといえましょう。30年代からずーっと映画界にいた人なんですけどねえ(笑)。

当時仕様ではウルトラモダンな恋愛コメディ、今では…むしろ上品でいいよ(笑)、いまどきのナマナマしいコメディと違って(笑)

ま、期待しただけのモノ(ニーヴン見たさで借りた)は見れました!よかったよかった。

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