1964年、スタンリー・キューブリック監督作品。モノクロ。
スカパー録画で視聴。十代の頃TVで見て以来の再見。
昔見た時は、ブラックな笑いに満ちた展開とピーセラのドタバタに凄いすごいと笑いこけていたと思う。

おいおい!いくのか!そこまで!!
…と顎を落とすようなネタバレはとりあえず避けておきますが。

冷戦の真っただ中、米軍基地の将軍(スターリング・ヘイドン)が突然、ソ連国境近くを常に飛んでいる爆撃隊へ、ソ連邦への核攻撃命令を下すと同時に、基地を閉鎖して外からの情報を遮断してしまう。将軍が狂っていると気付いた副官(ピーター・セラーズ)や
、核戦争など始める気はない大統領(セラーズ二役)と政府・軍部の首脳陣は、それぞれ爆撃隊を止めようとするが、なかなか果たせない。万一の時の報復用”に準備された核爆弾搭載爆撃機が核戦争の引き金を引けば、当然、ロシアにも準備された“報復用”の核兵器が発動して全面核戦争になること必定。何人かの“ヘンな人”、いくつかの“ヘンな小道具”やヒステリーから噴出するブラックなギャグ場面をのぞけば、全ては地味ぃーに、モノクロのリアリズムで進行してゆき、「未知への飛行」や「駆逐艦ベッドフォード作戦」等同様、冷たい気味の悪さとじりじりするような焦燥感とともに話は進行していく。上層部がどうあれ、末端で武器を握る兵卒たちは基本あくまでも誠実に倒れてゆく。


そう、ブラックな笑いは、周囲をリアリズムでかためればかためるほど効果が上がるのだ。
とことん冷え切った感じのカンファレンスルームに、軍備担当のストレンジラブ博士on車椅子(セラーズ三役)が登場し、ナチス式敬礼を(勝手に?)したがる右手をむぎゅぎゅぎゅと抑え込みながら対策について一席ぶつ場面。気持ち悪さは最高潮に達する。しかしこうして見直すと、実はこの映画、ギャグの多くは、イケイケでタカ派なダージドソン将軍を演じたジョージ・C・スコットが担っていたのに改めて感嘆させられた。昔見た時は気が付いていなかったのかな。いやーしかしさすがに上手いです。偏見に満ちた激ダメ人間なのにどこまでも陽性で愛嬌すらある…
この愛嬌が、ナチの亡霊とも言える博士のメンタリティにすごく自然に親しみ繋がっていくあたりのコワさと説得力がまた、どす黒いモノを感じさせていい感じ(この言葉は合わないかもだが)。

だいたい、1人が狂っただけで全面核戦争が引き起こせる体制ができちゃってたりする時点で地球ダメかも。そして、現実にしっかりできちゃってそうな感じで…実際には冷戦が終わっててホントによかった…
とはいえ冷戦だから、とか、人は狂うことがあるから、じゃなく、人間てバカだから、何度でも自分の墓穴を掘るんだろうなあと思わせるこの物語。古びてないですよね。
(“昔のハイテク軍備”とか、レトロ心をくすぐるものではありましたが…)

最近「パットン大戦車軍団」の一部をチラっとスカパーで見て、これまで苦手だったスコット(だってむちゃ押しが強そうなんですもん)が気になりだした、というキモチもあって再見したこの映画。

はい、やっぱ名優ですなあ…

ピーセラよりもスコットに目を奪われてしまいました。

パットンも録ったから近々見よう。
これもそーとー困った軍人さんだと思われますが…(^^;)


<7/2追記>
冷戦が終わっててほんとにヨカッタ、って書いたけど、冷戦終わってるのに、日本は今頃こんなにキナ臭くなってきてるの…なんでだ。
いやだなあ。

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