1972年、ジョゼフ・L・マンキーウィッツ監督作品(遺作らしい)。
ふと見たらHDD内に「スルース」もちゃんと録画してあったので(忘れてたんかい!)、「デストラップ」に続く怒涛の勢いでこちらも視聴。久しぶりの再見である(昔見たのもTV放映だった)。うんうん、やっぱり、こっちのほうがより楽しいなあ。
それに、「デストラップ」の主人公たちの目指すものはカネと成功だが、「スルース」の死闘は人間の尊厳とオスのプライドを賭けたもの。意地悪のための意地悪、気取って飾り立てた悪意がギンギンに輝いているのだ。そう考えれば深み?が違うかな?(笑)
超豪華好事家的お屋敷に住む推理作家アンドリュー・ワイク(ローレンス・オリヴィエ)は、ある日妻の愛人の美容師マイロ(マイケル・ケイン)を呼びつけて、「あの贅沢な妻と付き合うのは物入りだろう、保険金目当ての偽装盗難事件の演出に一役かってくれないか(宝石はマイロ、保険金はワイクが取る算段)」と依頼する。だが、ワイクの真意は…
これでもほんの序盤だが、あとはあえて書かないでおきます。最近リメイクされたからネタ知ってる人も多いかもしれませんけどね(私自身は、M・ケインがワイク役をやるとか言うのでへぇぇと思ったけど、新しい方は見てません)。
可能なら最初の一回はなるべく予備知識なしに見る方が楽しいですよ。
新旧二大英国スターが丁々発止(当時はまだケインも「新」といえる若さだったのサ)、いかにも元舞台劇らしいケレン味タップリの作品。限られた空間での進行、演技にも展開にも舞台劇くささはたっぷりだが、舞台となるお屋敷の美術が凄いので映画にした甲斐は十分では。
冒頭、ワイクの屋敷をたずねてきたマイロがふみこむ庭の迷路にまずドギモを抜かれます。でかい。ハンプトンコートとか、大きな城館には生垣の迷路をあしらった庭園が実際時々あるんですが、古典的推理小説作家ワイクの「こだわり」を語って余りあります。家の中にも、そこらじゅうにゲームやミステリのジオラマや愛らしくもブキミな人形(その多くが仕掛けのあるオートマトン)があふれていて、野次馬として訪れたらどんなにか楽しいだろうとワクワクである(私的には迷路が最高だが)。壁際にはクリスティの写真やエドガー賞(推理小説界のアカデミー賞とでも思ってくれて良い)受賞者に贈られるポー像まで飾られている(戯曲を書いたアンソニー・シェイファーが別作品で受賞した私物!だそうな)。
土地の名士な初老の有名作家と、イタリア系移民の子の、若くてピチピチな成り上がり美容師。階級差と世代差を互いに強く意識しつつ、の仁義なき戦い。二人とも山のようなセリフをマシンガンのようにまくしたて、鮮やかかつ熱演だが、私はどうもローレンス・オリヴィエという人にちっとも魅力を感じたことがない(そんなに色々見てもいないのだが)。ついついマイケル・ケインにばかり目が行っていた(笑)
いや、ケインだって別に好みではないのだが、さすがはケイン、オイルのようにたらーりたらりとキザと色気が垂れて流れてきてます。まあ、そういう役ですし(笑)
そして、忘れられないのがジョン・アディスンのスコア。メイン・テーマは軽快な中にもちょっとイジワルそうな棘を含ませて印象的。同じくひとひねりしたミステリ映画「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」も、遊び心と抒情とサスペンスを縦横に味あわせてくれる実に素晴らしい出来で、これはサントラ持ってます(そこまで好きではないけどなんとなく「遠すぎた橋」も持ってます)。なんというか、知的な作曲家さんなんですねきっと。
どんでん返しやトリックが分かってからでも、この美術と音楽だけで結構再見の価値あり。エンディングの、計算ずくの中途半端さも面白い。最後までイジワルな味わいがやっぱり英国的で(アメリカ映画だけど)楽しめました。
ふと見たらHDD内に「スルース」もちゃんと録画してあったので(忘れてたんかい!)、「デストラップ」に続く怒涛の勢いでこちらも視聴。久しぶりの再見である(昔見たのもTV放映だった)。うんうん、やっぱり、こっちのほうがより楽しいなあ。
それに、「デストラップ」の主人公たちの目指すものはカネと成功だが、「スルース」の死闘は人間の尊厳とオスのプライドを賭けたもの。意地悪のための意地悪、気取って飾り立てた悪意がギンギンに輝いているのだ。そう考えれば深み?が違うかな?(笑)
超豪華好事家的お屋敷に住む推理作家アンドリュー・ワイク(ローレンス・オリヴィエ)は、ある日妻の愛人の美容師マイロ(マイケル・ケイン)を呼びつけて、「あの贅沢な妻と付き合うのは物入りだろう、保険金目当ての偽装盗難事件の演出に一役かってくれないか(宝石はマイロ、保険金はワイクが取る算段)」と依頼する。だが、ワイクの真意は…
これでもほんの序盤だが、あとはあえて書かないでおきます。最近リメイクされたからネタ知ってる人も多いかもしれませんけどね(私自身は、M・ケインがワイク役をやるとか言うのでへぇぇと思ったけど、新しい方は見てません)。
可能なら最初の一回はなるべく予備知識なしに見る方が楽しいですよ。
新旧二大英国スターが丁々発止(当時はまだケインも「新」といえる若さだったのサ)、いかにも元舞台劇らしいケレン味タップリの作品。限られた空間での進行、演技にも展開にも舞台劇くささはたっぷりだが、舞台となるお屋敷の美術が凄いので映画にした甲斐は十分では。
冒頭、ワイクの屋敷をたずねてきたマイロがふみこむ庭の迷路にまずドギモを抜かれます。でかい。ハンプトンコートとか、大きな城館には生垣の迷路をあしらった庭園が実際時々あるんですが、古典的推理小説作家ワイクの「こだわり」を語って余りあります。家の中にも、そこらじゅうにゲームやミステリのジオラマや愛らしくもブキミな人形(その多くが仕掛けのあるオートマトン)があふれていて、野次馬として訪れたらどんなにか楽しいだろうとワクワクである(私的には迷路が最高だが)。壁際にはクリスティの写真やエドガー賞(推理小説界のアカデミー賞とでも思ってくれて良い)受賞者に贈られるポー像まで飾られている(戯曲を書いたアンソニー・シェイファーが別作品で受賞した私物!だそうな)。
土地の名士な初老の有名作家と、イタリア系移民の子の、若くてピチピチな成り上がり美容師。階級差と世代差を互いに強く意識しつつ、の仁義なき戦い。二人とも山のようなセリフをマシンガンのようにまくしたて、鮮やかかつ熱演だが、私はどうもローレンス・オリヴィエという人にちっとも魅力を感じたことがない(そんなに色々見てもいないのだが)。ついついマイケル・ケインにばかり目が行っていた(笑)
いや、ケインだって別に好みではないのだが、さすがはケイン、オイルのようにたらーりたらりとキザと色気が垂れて流れてきてます。まあ、そういう役ですし(笑)
そして、忘れられないのがジョン・アディスンのスコア。メイン・テーマは軽快な中にもちょっとイジワルそうな棘を含ませて印象的。同じくひとひねりしたミステリ映画「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」も、遊び心と抒情とサスペンスを縦横に味あわせてくれる実に素晴らしい出来で、これはサントラ持ってます(そこまで好きではないけどなんとなく「遠すぎた橋」も持ってます)。なんというか、知的な作曲家さんなんですねきっと。
どんでん返しやトリックが分かってからでも、この美術と音楽だけで結構再見の価値あり。エンディングの、計算ずくの中途半端さも面白い。最後までイジワルな味わいがやっぱり英国的で(アメリカ映画だけど)楽しめました。