1965年、ジョージ・シートン監督作品。モノクロ。

以前から気になって、見たいなあと思っていた、ちょっと変わった戦争サスペンス。いやー面白かった!もっと早く見ればよかった。

1944年、ノルマンディ上陸作戦前夜。米軍情報部のパイク少佐(ジェームズ・ガーナー)は、任務中に薬を盛られて敵側に拉致された。やがて同盟軍の病院内で意識を取り戻した彼は、白くなりかけた髪や霞む目、何よりも1950年の日付入り新聞に愕然とする。
知らないうちに、6年もの時間が過ぎているというのか?
しかし実は、ここは、彼を騙して情報を引き出すべくドイツ軍がしつらえた、偽の病院だった!「記憶喪失の治療にあたるアメリカ人軍医」になりすましたガーバー少佐(ロッド・テイラー)の誘導は、同盟軍の上陸作戦詳細を、うまうまとパイクから引き出してしまうのか?

ストーリーを細かく書くとだいなしだろうから我慢しますが、「スパイ大作戦(Mission Impossible)」の先鞭をつけるような、コンゲーム風の着想がすばらしい。
どこでパイクが気がつくか、気がついたとしてどう出るか。じりじりしながら見るわけですが、見ごたえを増しているのは何と言ってもガーバー少佐の人物設定だろう。彼はドイツ軍人ながら、拷問を嫌ってスマートな知能戦で情報を得ようとしているのだが、親衛隊の傲慢でサドな大佐が「こっちで尋問(=拷問)したい」と横槍を入れてくるので苦い思いをしている。そのへんちょっと見る方も少し共感してしまう。
「36時間」というタイトルは、36時間で情報を引き出せなければ親衛隊が引き取るぞ、と大佐が強要したことによる。

敵ながら誠実さをかいまみせるガーバーは、パイクと一時心を通わせすらする。その助手である看護婦アンナ(エヴァ・マリー・セイント)に秘められたハードな背景もいい。単なるアイデアストーリーに終わらない厚みを感じさせてくれる脚本だった。
ドイツ側の人物、特にガーバーの描き込みが濃いぶん、終盤の逃亡劇はちょっと物足りなく感じたりもするのだが、最後までひとひねりあるキャラ作りにつとめる監督(脚本もシートン)の心意気に打たれる佳作。小味な"昔の映画"らしい良さ満載で、オススメです。

ロッド・テイラーって濃すぎるカンジであまり好きな俳優ではなかったが、今回は良かった~。見直しました(笑)
ガーナーも、相変わらずの、ちょっと緊張感のユルいまったりしたところが、受ける芝居で映えていたと思う。ガンガン攻めの姿勢に入っちゃう俳優だとバランスが逆に悪くなるよね。

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