1957年、デルマー・デイヴィス監督作品。モノクロ。
心理サスペンス風味の強い、ちょっと独特の味わいの西部劇。
スカパーで録ってたものを数カ月遅れで観賞。なぜ遅れたのでしょうね。グレン・フォードがあまり好みでなかったからか?でも、ヴァン・ヘフリンは結構イイと思ってた。「シェーン」にちょっとよろめく人妻のダンナ(農民)など良かった。アラン・ラッドが好みでないせいもあり、「こんな良いダンナがいるのになぜ!」と思ったくらいである。


乾いた荒野を走り抜ける駅馬車に、ベン(フォード)の率いる強盗団が襲いかかる。抵抗した御者のみを射殺し、強盗団はあっさり駅馬車を制圧して金を奪う。たまたま二人の息子を連れて通りかかった貧しい小牧場主ダン(ヘフリン)も、足止めと称して馬を奪われる破目に。少年たちは父親の慎重な態度にちょっと不満げだ。

干ばつで牧場も破綻寸前のダンは、馬を回収したあと、借金のためビズビーの町を訪れるが果たせず、町に一人居残っていて逮捕されたベンの護送を、報奨金目当てに引きうける。
ダンと同行するのは駅馬車の社主(ロバート・エムハート)と吞んだくれのアレックス(ヘンリー・ジョーンズ)の二人だけ。
うかうかしているとベンの子分(リチャード・ジェッケル)たちがボスを奪回すべく襲ってくる筈。
3時10分発のユマ行き列車に、無事ベンを乗せることはできるのか?

不敵な強盗団の首領の癖して、ベンは当たりのやわらかい、一見温厚で感じの良い男。が、手錠をかけられ抗いもせずダンに従いながら、なめらかな舌で「逃がしてくれたら大金をやる」と誘惑し、「金がないから奥さんにも苦労をかけたろう」とかき回し、時に「子分が追いついたら殺されるぞ」と彼を脅す。そのいちいちに動揺し、その屈辱に身を震わせるヘフリンがたまらなく良いですね~。がっしりと無骨な体型、オデコにギョロ目の異相にもかかわらず何だか神経が細かそう、という不思議な持ち味のヘフリンなので、まさに水を得た魚のよう。
実際、彼らが息をひそめて列車を待つ、駅のそばのホテルは、やがて子分たちに包囲されてしまう。ダンに危険を知らせようとしたアレックスは殺され、頼んだ助っ人たちは逃げ出し、社主は完全に諦めの境地に…

だが、さっきまでベンの心理攻撃に右往左往していたダンは、追いつめられて逆に、完全に肚が据わってしまう。
家族のため、牧場のため、金のためだった筈の危険な賭けは、己の誇りのためにこそ、中途で止められないものとなる。列車の到着を知ったダンは、夫を案じて駆けつけたアリスをかたく抱擁すると、ただ一人、ベンに銃を突きつけながら駅へと向かうのだった…


最後の抱擁シーンがとてつもなく美しいです。ひたすら夫の命を案じる妻、しかし、夫はもはや決断してしまった未来への「希望」しか語らない。雷を聞かなかったか?と訝る横顔には不安の翳すらなく…
駅へ向かいながら、「逃げてくれ、撃たれるぞ(しかもDo me a favorとまで言ってる)」とダンに向かって言うベンも、ダンの男気に魅せられたとしか言えませんね。まさかのラストは、グレン・フォードをキャスティングしておいたからこそ通じたかと思ったりもしますが、意地を通し抜いたダンを祝福するかのように突如降りだした驟雨を見上げるアリス、走り去る列車に、さわやかな感動とフランキー・レインの歌がかぶります。

いやー、面白かったーーーーー!

白黒のコントラスト鮮やかな画面、そして、妙に俯瞰的な、垂直にメリハリをつけたカメラの動きが、サスペンスを倍加。ムダのない引きしまったシナリオと合わせて(ムダ無さ過ぎて粗筋、書きにくい…)、確かに評判通り(リメイクされるくらい)の傑作でしたね。
どの程度悪なのかそれほどでもないのかよく分からない悪役というベンの不思議なキャラクターも、グレン・フォードで正解だったかな。

まあ、ベンが酒場の女の子(フェリシア・ファー)をひっかけてモタモタしてなければ、さっさと逃げてりゃすむ話なんですが、まあ、それは無粋なツッコミですかな(笑)
フェリシア・ファーの出番があれだけだったというのも少しビックリでしたが。

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