1937年、ジョージ・スティーブンス監督作品。モノクロ。
フランス盤DVD(フランス語字幕!のみ)にて視聴。安さに負けて私が買ったあと後米盤や英盤も出たようだが(写真は米盤)、どうせどれも英語字幕がないのは同じだ。ちぇ。なにせ日本盤は昔VHSとLDが出たようだがそれっきり。一度ヤフオクにVHSが7000円で出たのを見たが、半日もしないうち即決落札されていた。うーん…

ちなみにこの「踊る騎士」の原作は、あのP・G・ウッドハウス。なんとエムズワース卿&ブランディングス城モノのひとつらしい。買ってから一年もおいていた理由(のひとつ)は、ここ数年国書刊行会が着実にウッドハウス作品の邦訳をガシガシ進めてくれているので、邦訳が出ないかなーと期待していたため(シリーズの前作までは邦訳出てる)。でも。ジーヴスものが優先みたいだなあ…ジーヴスも、大好きだけどね。
さて物語は。


英国のカントリーサイド、トトレイ城。アリス(ジョーン・フォンティン)と父のマシュモートン侯爵(モンタギュー・ラヴ)、おばのキャロライン(コンスタンス・コリア)とその息子レジー(レイ・ノーブル)らが住んでいる。使用人たちは「アリスお嬢様の結婚相手は誰になるか」を賭けのネタにして楽しんでいた。アメリカの人気ダンサー・ジェリー(アステア)はロンドンを訪れた際、厳格なおばの妨害を逃れて街へ出てきたアリスと知りあう。「お嬢様の本命はバカンスで出会ったアメリカ人らしい」と聞きつけた城のボーイは自分が賭けたこの本命=ジェリーだと思いこみ、助けを求めるアリスのラブレターを偽造してジェリーを城に招く。気をそそられたジェリーは宣伝マン・ジョージ(ジョージ・バーンズ)やその秘書グレイシー(グレイシー・アレン)を連れ、三人で城にのりこむが…

ストーリーが能天気なのは、ウッドハウスがかんでなくても昔のミュージカルには普通のこと。一連のアステア=ロジャース映画の途中にポツンと生まれたこの映画の扱いが昔も今もビミョーな理由は、別の所にある。製作当時は、観客がアステア=ロジャース映画を熱狂的に求める中、アステアの「ロジャース以外の相手とも映画を作りたい」強い要望で生まれた企画だったというのが不遇の原因でしょう。そして、若いジョーン・フォンティンが…踊れないし歌わないし綺麗だけどいささかデクノボウ状態、というのが、今見ても痛いから。

でも!
ミュージカルシーンと、ジョージ・バーンズ&グレイシー・アレンの夫婦漫才コンビはなかなかよろしいです♪ガミガミ屋バーンズと天然ボケ娘アレン、でもアレンは結構バーンズにラブみたいなキャラ設定ね。
そして、ヒロインが踊れないぶん、ロマンチックなナンバーは少ない(というかアステアが一人でやってる!)。が、コミカルなナンバーは結構見ごたえありで良かった!!!

アステア最初のナンバーは、往来で踊りまくるソロ“I can’t be bothered now”。強い陽差し、車がばんばん通る背景も新鮮で楽しい。
恋の先行き上々、と、アステア&アレン&バーンズで盛り上がる"Put Me to the Test"は、コミカルナンバーにお約束の足の蹴り合い踏みあいもたっぷりで笑える。
圧巻は遊園地での三人が、滑り台や動く床やグニャグニャ鏡を使って大騒ぎの"Stiff Upper Lip"。アステアとアレンが手を携えてぐるぐる駆け回り『ランアラウンド』(舞台時代にお姉さんのアデールとやってた十八番…らしい)!グニャグニャ鏡ダンスは他の映画でもやってるけど一番強烈だった。途中からモブもがんがん踊り始め、名もなき?英国紳士たちのかなりヘンな踊りも楽しめちゃう。最後には「吉本新喜劇か!」とツッこんだが、これは関西人にしか分かるまい(笑)

その他、“Things Are Looking Up”“A Foggy Day”“Nice Work If You Can Get It”など、ガーシュインの曲はみんな魅力的だしね。
バーンズもアレンも、大アステアと一緒に踊るってんで最初はビビってたそうですが、イイ味だしてますよ。バーンズはまだしもアレンはかなり「踊れない」ぽいけど、そこはそれ、コメディアンの個性でコミカルに。
漫才チックなやりとりは、字幕がないので雰囲気しか分からないとこもあるけど笑える。
…ああ…字幕欲しかったな…
今度オークションに出てたら高くても落札しようかな。不要になったらすぐ高価で転売できそうだし。

誤解が誤解を呼び、人違いは頻発し、能天気な恋が大量発生するウッドハウス作品。最後にはお城の伝説にかこつけて強引に「まあいいじゃないか」になっちゃうけど(笑)、もはやロマンスはどっちでもよろしい。
アステア&バーンズ&アレンという素敵コラボと力の入ったコミカル・ダンスナンバーが楽しめて、十二分に満足しました(*^^*)
大昔、学生時代に輸入盤のサントラレコード(CDに非ず)を買って、音のみで映像をあれこれ想像したもんでしたが、ようやくちゃんと見れました。ふふふ。


視聴後ネットで、『私は誰でしょう』What’s My Line? のバーンズ&アレン篇動画を発見。
二人で出てきて、回答者(目隠ししてる)の質問にどう答えるのかと思ったら、司会者が「今日のゲストは声きいたらすぐわかっちゃうので、YesかNoをコンコンとノックで答えてもらいます」というので、エエエエエーーーーッ!?とのけぞり。いや、ほんと一発でわかるけど。
まあそのくらい一時はラジオ等で大人気のコンビだったと聞いています。
あの古典ミステリの大物ヴァン・ダイン(「グリーン家殺人事件」「僧正殺人事件」の)だって、何故か「グレイシー・アレン殺人事件」なんての書いてるし。

…さすがや。


映画のナンバーもWhat’s My Line?も、結構動画が上がってるのでリンクはっときます(笑)

http://www.tcm.com/mediaroom/video/374092/Damsel-In-Distress-A-Movie-Clip-I-Can-t-Be-Bothered-Now.html

http://www.youtube.com/watch?v=bYoZeYYHfPo ("Stiff Upper Lip")

http://www.youtube.com/watch?v=qLX0cBpvHHY&feature=related ("Put Me to the Test")


http://www.youtube.com/watch?v=q3vQpBLAS2Y   What’s My Line? George Burns and Gracie Allen (1954)

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