1951年、チャールズ・クライトン監督作品。モノクロ。イギリス映画。

冴えない堅物の銀行員ホーランド(アレック・ギネス)は毎週金塊輸送車に添乗していたが、ある日土産物製造業(国内外の名所型の小物、例えばエッフェル塔の置物とか作ってそれを輸出もしてる)を営むペンドルベリー(スタンリー・ホロウェイ)と知り合って、バッチリ冴えた金塊強奪計画を思いつくのだが…


英国人の国民性は、カタブツだ俗物だという先入観を抱かれているのだが、それがハジケるときの爆発力はすごい。「カインド・ハート」(http://13374.diarynote.jp/200907181339599494/)でも、英国人のユーモアはこの国民性イメージに反比例するがごとくに奥深い…というようなことを書いた気がするが、これはユーモアをもって描かれる、英国的冒険精神の物語だ(笑)
…もちろん泥棒映画だが。

だが、シロートの、ごくフツーのオジサン二人が知恵を寄せ合い、つまらない現実からはばたくべく計画を練る姿の可愛らしさ。誰も傷つけるつもりはない。行く手に立ちふさがる難題をどう乗り越え、どう計画を遂行するか…やっぱりシロート、ぎこちなく頼りないながらも、その一生懸命さがなんともいえないイイ味の物語。
この映画について、ブラックユーモアと書かれているかたもあるが、これはむしろ、オジサンたちの夢と冒険精神と男の友情のサスペンスコメディだ。だから後味もいい。ホーランドに「走れ!」と叫ぶペンドルベリーは素敵だし、胸を張って高飛びの彼はきっと何一つ悔いてないだろう。

しかしギネスは上手いなあ。ピーター・セラーズが泥臭く見えてくるよ(といってもピンク・パンサーシリーズ程度で、セラーズ作品全部ちゃんと見たわけではないのだが。この人のも多分、本当にいいモノは未公開では…)。そして、「小心で神経質」なギネスと組むホロウェイ、この人もイイ。「マイフェアレディ」の下町オヤジが一番知られてるんだろうけど、ここでは美を愛しシェークスピアを引用しまくる日曜画家で、自分の稼業の土産物業を「醜悪」と思ってる、おおらかで人のよさげな中流紳士だ。ギネスと素敵な対照を醸し出している。

あえて細かい流れは書かずにおきます。何もきかずに、とりあえず見るベシ。
オジサン好きには特にオススメ。女っけはほぼナシです。売れる前のオードリー・ヘプバーンがワンカットだけ「通りかかる」のは結構知られていると思いますが…


しかし最近のユニヴァーサルは素晴らしい。日本では噂のみ高く未公開だらけだった所謂“イーリング・コメディ ”を廉価で連発してくれるのだから…。大昔「マダムと泥棒」をTVで見て感心して以来(そしてたぶん和田誠さんの本かなにかで)、英国にイーリング・スタジオあり、いやありき、というのは知っていたのだが、先日の「カインド・ハート」といいコレといい、聞きしに勝る小味な傑作群であると実感できた。字幕の質は不評なのが多いようだが無いよりは…(^^;)
次は「白衣の男」を狙おう。コレもギネス主演、コレもユニヴァーサル発売☆

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