暗黒街に明日はない
1939年、ジョン・ファロー監督作品。モノクロ。

数百円だったのでレンタル落ちビデオをゲット。画質の酷さは覚悟の上。でも、もともと、ジョージ・サンダースの“セイント”シリーズは一度見てみたいと思ってたんですよね。「イタリア旅行」を見たあとすぐ、ヤフオクで購入。

現代は“The Saint Strikes Back”。
“セイント”というと、アメリカではそれなりに有名な義賊/怪盗紳士なんですが(シリーズ第一作発表は1920年代末頃)、日本ではどうなのかな。ロジャー・ムーアのTVシリーズ版はある程度知られてそうだけど。
邦訳はろくに出ていない。が、なぜかジュブナイル訳は古くから存在し、実は私も小学生のころあかね書房版「あかつきの怪人」でセイントを知り、好感を抱いたものでした。悪人をやっつけて上前をはねたり、元の持ち主に返したり、気が向くと困っている人を助けたり。悪党を倒すため警察と手を組むことすらある。そんな何でもありな冒険がユーモアを交えた軽いテンポで繰り広げられる…。
普段、うさんくさい紳士ヅラの悪人を演じることが多いサンダースが、うさんくさい紳士ヅラのヒーローをキザっぽく演じてイイ感じです。

だいたい、私がこの人を意識しだしたのは、思い起こせば「海外特派員」。主役のジョエル・マクリーの記者仲間で、洒脱で抜け目がなく、意外に肝がすわった活躍を見せる。名前がフォリオット、先祖が革命期に首を斬られたので名前の頭文字が小文字の“f”なんだ、とか言う場面が忘れられません。というか脇役なんだけどこの人のことしか余り覚えてません。というわけで、こういう、ユーモアをにじませつつ、キザに図々しく立ち回る怪盗紳士は私にとっては「待ってました」の役どころ。

話は想像通りに軽い(なんとわずか64分)。
父警部がギャングと癒着していたとの濡れ衣を着せられ自殺した、その仇を探そうとゴロツキを手下にし自身が女ギャングみたいになっちゃってる勝気なヒロイン(ウェンディ・バリー)。彼女を助けるような対立するような、微妙な立ち位置のセイントの手段を選ばぬ捜査(ひっかきまわしてるだけにも見える)はやがて、父親を陥れた真の悪徳警官が誰か、そして名前しかわからない真の黒幕が誰かを明らかにしてゆく…。
ただし悪い奴は割と見え見えだし、主人公たちが陰で聞いてるところで“実は…”と得意そうに吹聴するというお約束なバカだし、終盤とってつけたように(予定時間内におさめるためか?)急にラスボスが判明するのはやはり失笑ものだし。
あくまでも、気軽に楽しめるB級娯楽作として遇してあげましょう(^^;)
サンダースのキザ演技やユーモラスなセリフの掛けあいには何度もニヤリとさせられます。都会調のユーモア・サスペンスが好きな人ならそれなりに楽しめるのでは。

ヒロインはちょい馬顔で、あまり綺麗と思わなかったけど…
むしろ目立ったのはヒロインの手下の一人がバリー・フィッツジェラルドで、ビリングは五番目だけど、ユーモラスな演技でちょこちょこっと場面をさらっていました。ラストシーンにも割り込んでるし(笑)…さすが、後年「我が道を行く」で主演・助演同時ノミネートの快挙をやらかす人だけのことはある(最終的には助演で受賞した)。

あと、NYからSFに飛ぶのに、主人公たちが寝台のある飛行機(個人所有機でなく旅客機)に乗ってる場面があり、ビックリしました。飛行機のワキには“SkySleeper”のロゴが。
ほんとか~?!(いや、疑っても仕方がないのだが)

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