媚薬

2014年7月8日 映画 コメント (4)
1958年、リチャード・クワイン監督作品。カラー。
スカパー録画で(ン十年ぶりに)鑑賞。
キム・ノヴァクが最高に輝いていたソフィスティケイテッド・コメディ!…という記憶は、今回見直しても完全にそのとおりだった。

クリスマス・シーズンのニューヨーク。原始美術工芸品店の主ギリアン(キム・ノヴァク)は、上の階に越してきた編集者シェップ(ジェームズ・スチュアート)と出会う。長身で真面目そうなごくフツーの男。一方のギリアンは、実はフツーの人間ではなく、人間界に隠れ住む魔女なのだった。いい感じ、と思ったシェップが大学時代の同窓で仇敵(当時険悪な仲だった)マール(ジャニス・ルール)と婚約しており明日には結婚式予定、と知ったギリアンは、使い魔のシャム猫に呪文をささやく。シェップは急にギリアンから目を離せなくなり、熱烈なキス、そして彼女にプロポーズ!だがギリアンは、彼を魔法で惑わしたことが次第に後ろめたくなり、ついには真実を告げてしまう。シェップは激昂するが…

「魔女であること」にちょっと飽きているヒロインの、アンニュイで神秘的な魅力をキムが最高に体現している。猫系の顔立ちはいかにもだし、黒を基調としたオシャレなパンツスタイルは今でもそのまま使えそう。
ラストは誰でも想像がつくでしょう。ロマンチックな軽いラブコメでほっこりと見終われる。でも演者の魅力でとてもいい気分になる。ギリアン同様魔法が使える弟ニッキー(ジャック・レモン)とおばクイーニー(エルザ・ランチェスター)、ベストセラー量産中のオカルト研究家(アーニー・コヴァックス)ら、脇を固める面々もみな存在感たっぷり。レモンはいつもの「いい人一本槍」じゃなく、金儲けをたくらみ身勝手に周囲をふり回すし、クイーニーは悪気なくビシバシ物事をぶちこわすタイプ(笑)。

魔女は泣かない、恋をしない…などの設定が物語のカギとなるが、真実の恋にめざめたラストの彼女がちょっとダサくなってるあたり、残念なようで、これは鋭いところがあるよね。結局フツーになってくれる方が男としては嬉しいの?とはいえ、自分ひとりのためにちょっとダサくなってくれる(それまでの自分を変えてくれる)…というのはポイント高い献身には違いないのかな。

雪のNYのロマンチックさ、ちょっとビートニクな魔女たちのたまり場(レモンはボンゴを叩いてる!)、自宅も事務所もおしゃれなインテリアで目に楽しい、撮影もバッチリ決まっています。時にジャジーに、トリッキーに、時には甘く…のジョージ・ダニングの音楽も素敵。実は昔TVで見たあと、サントラ盤を買い込んでいます。

どうしても私は好きなスターというと男優がほとんどになるけど、好きな女優をとなるとキム・ノヴァクが上位に食い込むのはやっぱりこれと「めまい」の魅力のせいですね。作品を全部見たわけじゃない上、もっさりしてあまり魅力的に見えない時も確実にあるのですが、役にハマるとすごい破壊力。「めまい」も前半で“前世が魔女で”とか言ってたと思います。私見ですが、クールで神秘的な路線を狙うと、合うんだけどそれが百パーセントは決まらなくて、ところがそこからハミでた肉感的な何かがこぼれて、熱いのか冷たいのかわからない独特の魅力に結実するようです。「ピクニック」とかフツーの可愛い娘さんを演じるとつまらない…
監督リチャード・クワインも、都会派コメディが持ち味なんでしょうが(ブレーク・エドワーズの先輩格?)、評価は微妙なところのようです(私はそんなに悪印象はないですけどね)。でもこの作品は当時恋人だったらしいキムを最高に魅力的に撮って素敵な仕上がりです。

うーん、やっぱりよかった。うっとりでした。


ついでに思い出したこと。
ヒッチコック好きで知られるブライアン・デ・パルマの「フューリー」。カーク・ダグラスを助ける超能力者の少女が、エイミー・アーヴィング演ずる“ギリアン”でした。魔女→「めまい」、キム・ノヴァク、「媚薬」、の掛け合わせてでこのネーミングになったのではと勝手に思う私。
アーヴィングも猫系美女でしたね。ブロンドじゃないけど。

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