祝福

2011年2月13日 読書
長嶋有著。10作入り短編集。.

女ごころを書いたら、女子以上。ダメ男を書いたら、日本一!

と、オビにある。

主人公の男女比は5対5、ひとり紅白歌合戦なそうな。
いやホント、なんで長嶋サンの書く女子はこう、こころにスッキリ落ちるのだろうな…

草食系なところがいいのかな。
男主人公の描写でもそういうところがあるけど、女子の心中のよしなしごとの流れを書くのがうまい(というか好み)。だって、様々なささいなことに、「あ、○○」と反射的に思ったら、その自分の心の動きに対してもう一段階、驚きとかノリツッコミとか連鎖的な発見(ささいな)とかで、脱線してゆく自意識の動きがとてもとても納得できて、それが読んでいてここちよいのだ。
しゃべりことばも、心中の思いも、“きれいな文”ではなくリズムがちょくちょく乱れていて、その軽い乱れが逆にリアル感アップ。ヘタウマとまでいうのは失礼なんだろうけど。確か短歌も詠む人だから、当然熟考の上あるいはセンスにまかせて、乱しているんだよね。

たいがいの小説の主人公たちはもっと、脱線なしに何かを求めたり悩んだり、がんがん直進して行ってる。肉食ドロドロの愛憎絵巻は、小説のお楽しみとしての誇張があるのかもしれないけど、“面白いけど自分の内にはいまんとこないノリだった”ことがこの人の小説を読むとよくわかり、そして自分にずっと近い女性が小説の中をカッポしているのを知って嬉しかった。それが男性作家によるというのも不思議だけれど。

いや、自分の内にないからこそドラマチックさが面白い、というところもあるのはあるんだけどね、肉食系ロマンって(笑)


紅組は、スリルとだらだらの混在感が目の離せない「噛みながら」「十時間」がいい。普段着っぽさ全開な「丹下」「ファットスプレッド」も。
白組は高校の時のクラスの“不良”の思い出「マラソンをさぼる」かなあ。

いい話だけにしぼれば★4。
主人公が若いほどイイのはなぜだろう…

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