大盗賊
大盗賊
1961年、フィリップ・ド・ブロカ監督作品。仏盤DVDで観賞(英語字幕あり/日本語字幕なし)。
18世紀フランスの“義賊”を、ジャン=ポール・ベルモンドが演じた時代アクション。

スリの青年ドミニク(ベルモンド)は、パリの悪党たちの元締めマルショー(マルセル・ダリオ)の暴虐に嫌気がさして一味を抜け、ほとぼりをさますため軍隊に入る。もちろん軍隊でも、将軍たちの身勝手さは酷いもだった。お洒落で器用なモール(ジャン・ロシュフォール)や大力のジェントル(ジェス・ハーン)ら気の合う仲間とともに、軍用金を盗み出したドミニクは、可愛い女スリのヴェニュス(クラウディア・カルディナーレ)も連れてパリに舞い戻り、マルショーを倒して自分が新たなボスとなる。
人殺しはしない、金持ち貴族しか狙わない、ドミニク=義賊カルトゥーシュはパリの庶民の人気者になるが、宿敵・警察長官の高貴な妻イザベル(オディール・ヴェルソワ)に恋したことから長官のワナにはまり…


50年代、ヌーヴェルヴァーグやフィルムノワールの監督たちの寵児としてスターになったベルモンドの、意外やこれこそが初のコミカル・アクション路線。ベルモンドとブロカ監督の共同作品第一作なのだ。この映画はまだ結構ロマンティックなのだが(ド・ブロカ監督は意外やロマンティックなところもある…)、次の「リオの男」では、完全にスチャラカ・アクションの快作で、その後のフィルモグラフィを見ても、なんか本人はそういうのが一番好きだったのかしらという感じ(笑)

前半三分の二くらいまではかなりのお気楽コミカルタッチで話が進む。コスチューム・アクションの華やかさ、ベルモンドのアクションのカッコよさ、そして何よりカルディナーレが初々しくてとてもカワイイ。そんなに好きな女優じゃないけどコレは文句なしに良い。なんで他の女に目うつりするのか…。とはいえ身分の高さにもかかわらず傲慢さのない、高貴で誠実なイザベルは、それだけにカルトゥーシュの求愛にこたえるわけもなく、その手の届かなさ加減こそが、いつまでもコドモっぽさの抜けないドミニクを惹きつけたろうことは理解できる。こうした男のロマン的な愚行も、ベルモンドはほんとにバカ可愛く魅せてくれるが。

ラスト、宝石をつめこんだキラキラの馬車、愛する人をおくる月夜の葬列で、ロマンティックは最高潮に達する。達したところで、いきなり終わる。

いさぎよいにもほどがある…
こうなったらもう、あとは、大人になるしかない。泥棒の末路は死刑台と、認めるしかない。

能天気アクションから始まって、ほろにがいロマンティックで終わる、大人の童話(アクション童話?)、でした。

ベルモンドのコスチューム・アクションとしては「コニャックの男」の方がドタ・コメながら最初から歴史観等大人の視点が入った映画で、個人的にはそちらの方がより好きなのだが、フランス製コスチューム・アクションは、やっぱりベルモンドにトドメをさすなあ…(すいません、ジェラール・フィリップは好みじゃないもんで。)

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