生きていた男

2013年9月6日 映画
生きていた男
1958年、マイケル・アンダーソン監督作品。モノクロ。
あの伝説のどんでん返しが、ついにーーー!(笑)

父と兄亡きあと、女相続人として、南アフリカからスペインの瀟洒な別荘へ移り住んだキム(アン・バクスター)。そこへ、「実は生きていたのさ」と、事故死した兄を自称する男(リチャード・トッド)がやってくる。容貌からして違う、兄の遺体は自ら確認した、馬鹿なことを!とキムは警察を呼ぶが、男の持つ書類は完璧で、追い出すことができない。やがて彼は得体の知れない仲間を呼びこんで…

冒頭で、キムについて下調べ中の「兄」たちの姿を映し出しているので、ヒロインが精神的に不安定要素を抱えているらしいにもかかわらず、全編彼女と「兄」の対決として映画は展開する。“偽者”により陥れられるスリラーは他にもあるだろうが、主人公から見ると、刺青等の身体的特徴はともかく「顔を似せてすらいない」というのがかなりインパクト大。「明らかに別人なのに」それを証明するのは難しい…この大胆さがドキドキを更に盛り上げる。

「どんでん返しがみごとな作」として、ずいぶん昔に「お楽しみはこれからだ」の和田誠さんにオチを明かされてしまっていたのだが、それでも語り口のうまさに引き込まれ、大いに楽しめた。夜の別荘の無気味さと美しさ、風光明媚な海浜リゾートの鮮やかな色彩(モノクロなのに!)をともに伝える撮影も良いし(アーウィン・ヒリアー、「カンタベリー物語」の)。思いのほか甘くせつない系の音楽も、強引な物語展開に不思議な情感を添えている。

「兄」のリチャード・トッド、甘さのない二枚目ぶりがイイ感じ。地元警察のハーバート・ロムも相変わらずアクが強くてイイ感じ。無国籍なようできっちりと漂うイギリス映画臭がやはり私の好みに添うのか…
アン・バクスターはアメリカ娘にしか見えないし、実はあまり好きなタイプではないが、追い詰められる一方の可哀想なヒロインというのとはちょっと違う不透明感が面白くて、やはりよかった。まあトッド氏はニヤリと笑ってつっ立っていればそれで済むので、バクスター嬢が巧いんでしょう。
ちなみに、ロムと一緒に冒険活劇の傑作「絶壁の彼方へ」に出ていたダグラス・フェアバンクス・Jr.がプロデューサー。

うまく出来たお話は、古くても面白い、という見本のような映画でした。
DVDは出てないのですが、さる方のTV録画をダビングいただき、見ることができました。ありがとうございました!

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