1944年、フランク・キャプラ監督作品。モノクロ。

大昔TV放映(吹替え)で見て大笑いしたコメディ。久々にレンタルで再見したのだが、画質がえらくわるかったせいか(ジュネスですらなくワンコイン盤)、途中で何度も家族の邪魔が入って分断されつつ見たせいか(きっと両方だ!)、意外と「普通に面白い」というところにトーンダウンして感じられたのが残念。
舞台劇の映画化ということもあって、人の出入りなんかとても様式的な仕上がりながら、過激な設定を見事に組み合わせた上手い脚本なんだけどね。

裕福な慈善家で風変わりな旧家の老姉妹・アビーとマーサの家へ、甥のモーティマー(ケイリー・グラント)が結婚報告をしに訪れる。ところが彼は、居間のベンチの中に死体があるのを発見し、ハネムーンどころではなくなってしまう。何とアビーとマーサは、身寄りがなく不幸をかこつ老人に出会うたびに「相手のためを思い」毒を飲ませて安らかに死なせていたのだった。ちなみに死体は毎回、同居のもう一人の甥テディ(ジョン・アレキサンダー)に地下室に埋めさせていた。ちなみにテディは自分がシオドア(テディ)・ルーズベルト大統領だとの妄想を抱いてており、パナマ運河を掘ったり黄熱病患者を埋葬したりしているつもりなのだ。モーティマーが婚約者(プリシラ・レーン)も放り出して連続殺人を食い止めようと奮闘している所に、今度は、官憲に追われて逃亡中の兄ジョニー(レイモンド・マッセイ)が整形外科医アインシュタイン博士(ピーター・ローレ)を連れて現われる。殺人狂のジョニーもまた、殺したばかりの死体の隠し場所を探しているところで…、

ジョニーが整形手術の失敗でフランケンシュタインそっくりの容貌になっていたり(「ボリス・カーロフ似」とのギャグが連発される)、おばたちが既に12人も殺していると知り妙な競争意識を抱いたり…と、キレたキャラクターを逆に押さえたセリフ回しでマジメに?演じるレイモンド・マッセイ、いつもキョドってるピーター・ローレ、きゃぴきゃぴカワイイぶっとびおばちゃまたちジーン・アデア&ジョセフィン・ハル、能天気な警官ジャック・カースン、憂欝げな判事エドワード・エヴァレット・ホートン、誰もかれもが達者で見ごたえがある。
が、やっぱりこれはケイリー・グラントの映画ですかね。あれだけ二枚目でありながら喜劇役者そのもの!な彼、「お疲れ様!」といいたくなるような体をはった熱演を見せてくれる。さすがに終盤は「ちょっとやりすぎて失速しかけてきたか?」と感じないでもないが、縛りあげられたままぴょんぴょこ動いたり、ショックに棒立ちになってキョロキョロする様がニワトリの首の動きソックリなどと、これだけ色々捨てててなおかつこうも色男とは凄すぎるわなぁ(笑)

キャプラ監督も、いつものハートウォーミング路線はどこへやら、過激なシナリオを淡々と的確にすすめてゆく。基本がキッチリしてると何でもできるのね。

…まあ、ほとぼりがさめたら、ひとりで(!)じっくり再見する方がよいかもしれないなぁ。
未見の人はとりあえず見といてソンはない、盛りだくさんなブラックコメディではある。

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