襲われた幌馬車 “The Last Wagon”(1956年)2007年9月26日 映画 コメント (8)

襲われた幌馬車 “The Last Wagon”(1956年)
日本盤がどうしても出ないので、ついに海外盤購入。
以前にTV放映されたものをビデオに録ってはあるのだが、やっぱりDVDのほうが綺麗だしノーカットだし!

西部劇だが、それほど有名な作品ではない。
まあ、デルマー・デイヴィス監督ですから(苦笑)
フォードやホークスのように、神様だの巨匠だのと奉られる存在ではない。
サミュエル・フラーのように、B級と思われてたのがヨーロッパで後にコアなファンがついて…なんてほどのこともない。…しかし!

ミーハー心だけで選ぶと、私のウィドマーク・ベストはサミュエル・フラーの「拾った女」。
彼の都会的なカッコよさが凝縮されてる。が、それを補完、というか、彼の魅力のうち「拾った女」にない要素を堪能しまくれるのが「襲われた幌馬車」ではないだろうか。

ファーストシーンは、ライフルを構え、彼方の敵に狙いを定める、鹿皮服に身を包んだウィドマークの後ろ姿だ。
銃声一発、河の中へと転げ落ちる敵の死亡を素早く確認すると、厳しい表情のまま再び走り去る彼。
そして、彼を追うのは保安官バッジを付けた男たち。
やがて、弾も体力も尽きたウィドマーク(3日も飲まず食わずらしい)が、追手側で一人だけ生き残った保安官に取り押さえられるまでの荒野の死闘が、ストイックかつ流れるような一連のアクションで描かれる。うーんイイ感じだ。

だがこれは、実は物語のプロローグに過ぎない。

丁度そこへ、西へ向かう幌馬車隊が通りかかる。
近くの町まで同道しようという話になり、保安官はウィドマークを馬車の車輪に縛り付けておいて、自分だけ幌馬車隊の夕食のご相伴に預かる。
が、善良な開拓者達は、護送中の犯人を扱う保安官の残忍さ、低劣な品性に鼻白む。
「自分の兄弟を四人も殺された」と言うが、殺人犯にも食べ物を運んでやろうとした善意の少年ビリーに、いきなり銃をぶっ放すのは人間としてアレだろう(威嚇射撃でも)。
保安官は咆える。「食い物など与えるな!こいつの名前はコマンチ・トッド。金髪や青い目に騙されるな。白人の癖にインディアン女を娶り、インディアンと暮らしてた。中身は腐ったコマンチ・インディアンそのものだ!」
暴虐な振舞は、やがて保安官の身を滅ぼす引金になるのだが…

ところがその夜、幌馬車隊のキャンプをアパッチが襲う!
生き残ったのは、悪戯心でこっそり夜中の水浴びに出かけていた若者たちとビリー、連れ戻しに行ったビリーの姉。そして、縛られたまま崖下に落ちたため、戦いも出来ないがトドメをさされるのを免れた「殺人犯」、その七人きり。

無知未経験なオンナコドモだけで、アパッチの跳梁する荒野を抜けて安全な土地まで辿りつけるわけがない。一縷の望みは、唯一のオトナであり、荒野とインディアンに詳しいコマンチ・トッドの経験と能力のみ――

実は保安官らを殺したのも、元々、保安官兄弟らが彼のインディアン妻と幼い息子たちを惨殺したのに対する復讐。根は決して悪人ではない彼は、親切にしてくれたビリーと姉のジェニーに、よければ自分が町の近くまで送り届けてやるが、と申し出る。
ヒール(悪役)が、一転してヒーローを演じる運命の逆転。

若者たち(の一部)の葛藤や反感をものともせず、厳しく、だが真摯にサバイバルな旅を指揮するウィドマークが、そらもー超カッコイイです。

結構若い頃でまだ40そこそこ、アクション・スターとしては最高のコンディションか。
ライフルありナイフあり斧あり弓あり手錠からジャランと垂れた鎖あり、とにかく矢鱈と色々な武器を駆使した戦闘場面がもうサービス満点て感じ。
「では偵察してくる」と、手錠をまだはめたまま、しゅた!と馬に飛び乗り駆け去る様など惚れ惚れするほどスマートですし。昔の雑誌記事読むと、ウィドマークは乗馬には結構自信持ってたそうなんですが無理もない(*^^*)とか思ったりして。

あまつさえ、素直に慕ってくるビリーへの態度に父性オーラ全開なのがまたオイシイ。
殺された息子たちの姿をビリーに重ねずにはおれないわけで、ここらの設定はベタだが説得力十分。
父性全開なウィドマークというのは割と珍しいが、いい味出てますよ〜☆
ビリーに兎罠の仕掛け方を教えたりする場面など、あぁぁなんて「カッコイイ父」なんだー、と溜め息がでます。やりかたをきちんと説明して、「さあまかせた」と信頼の後押しだけ与えてさっと離れる(勿論離れた所からちゃんと気を配ってもいる)。
くう〜、いいなあ〜(^^;)

同時進行のロマンスは、ビリーの姉ジェニー(フェリシア・ファー)がお相手。
他の四人が基本的にまだコドモなのに比べれば、両親のいないジェニーはビリーの親代わり。「ビリーをちゃんと育てるため」に特に愛もない相手の元へ嫁いでゆくべく幌馬車隊に加わったのだ。
おそらくその母性が、虐待されるコマンチ・トッドへの同情を生み、同時に、両親のいない彼女は彼の背後にある父性のオーラに惹かれたのだろう。また、野生と自由の体現者でもある彼は、彼女の思惑をいい意味で裏切る新鮮な部分も持っているわけだ。
恋には新鮮さが必須であるし♪

最初から何だかかなり積極的なジェニーに、擬似息子(ビリー)付きとあっては、「家族を失ったいたみ」を抱える孤独な男が、抵抗できるわけがないだろう。

とはいえ。
全編大好きなこの映画、しいて瑕疵をあげるとすれば、あとちょっと…あと、ちょっとだけ、ロマンス部分については更にセリフに一工夫欲しかった…
死んだ奥さんのことがある割には性急に進むから…(^^;)
他の登場人物(若者たち)の設定もバランスよくて巧いと思うので実に惜しいです。

タカビー美人で異母妹を厭うヴァル。インデイアンの母を持つその妹ジョリー(ヴァルとジョリーの父親は幌馬車隊のリーダー)。ヴァルに気があるカッコつけのクリント。気が優しく常識的なリッジ。
コマンチ・トッドとの旅を通じて成長してゆく彼らの姿も、ドラマにめりはりを添えます。
全体的に、ダレることなく、かなり練れてる脚本だと私は思う…(ラストは大甘だけど)。

出ずっぱりなのにウィドマークに冒頭から20分以上全くセリフなしというのも適切だよね(100分強の映画)。獣のように戦い、獣のように保安官に扱われるのが、幌馬車隊の善男善女の様子を見て初めてちらっと表情の変化を見せ(『こういう世界もあったか』という感じ)、姉弟に食物を運んでもらい落ち着いたところで漸く彼の声が聞ける(笑)
それに反比例して保安官のえげつなさが強調され、スムーズに主人公がヒール→ヒーローへの道筋へ滑り込めるわけですな。
インディアン絡みなテーマも良識的にいい感じで織り込まれていると思う。

キャスト等はこちら(http://www.imdb.com/title/tt0049434/)

しかしコレ、特典映像としてスチル写真やポスターギャラリーがついてるのだが、どーすればPC内に持ってこれるんだろうなあ…(T^T)
プレイヤーの説明書には、イマイチそーゆーファイルの扱いについて書いていない…
どうしたもんかな。くそー、負けないぞ〜

コメント

nophoto
DCP
2007年12月28日8:42

オヨヨ!まあー懐かしいですねー。間違いなく半世紀前の。デルマー・デイビスとは知らなかった。あのドナヒューあんちゃんの甘ったるい「恋愛専科」の監督ですか。へぇーっ。

ボースン
ボースン
2007年12月28日22:26

いやいや好きなんですよこの映画!
半世紀前の作品でも、DVDの画質はなかなか綺麗です。ウィドマークをさておいても(笑)、アリゾナの大自然がまた実によろしい。ワイド画面で是非、ですよ。

nophoto
DCP
2007年12月28日23:58

アリゾナの大自然そんなに良いですか。又観ようっと。私、西部劇観る時、サボテンとかの平原も良いんですけど、例えば「西部開拓史」でD・レイノルズがG・ペックと相続しそうな炭鉱を見に行く所で紅葉が綺麗だったり、幌馬車隊の隊長が川辺でD・レイノルズにプロポーズする時も黄色く染まった秋真っ盛りで、ああ言う光景大好きなんです。ちょっと脱線してここではないから申し訳ないのですが、昔、オーディー・マーフィーと(多分)J・スチュワートの西部劇でまぁ感動的な息をのむほどの紅葉の場面があるはずなんで「夜の道」をオーダーしたんですがやっぱ違うかもと自信がなくキャンセル。記憶が曖昧で。日本の紅葉とはまた違ったダイナミックで美しい風景が西部劇の魅力で西部劇大好き!(そうそうフォード監督の騎兵隊も紅葉じゃなかったかなー)

ボースン
ボースン
2007年12月29日0:13

美しいというより、雄大で荒々しく、でもモニュメント・バレーほど乾燥した感じではなく、とにかく野趣あふれる感じです。

http://www.dvdbeaver.com/film/DVDReviews22/the_last_wagon_dvd_review.htm

…ケイタイだと見れないかなあ、大きな画像がイッパイですので。
「ゴーストタウンの決斗」も、テイラーとウィドマークが馬でゆく背後に雪を頂いた山並みが広がり、不思議に清澄な感じでした。ワイドで放映して欲しかった…
カラーの西部劇は、景色も売り物ですよねえ。

nophoto
カウポーク
2008年1月29日0:19

この映画は小生が生まれて初めて見た西部劇。笹塚ロマンだったかなあ。扉を開くと目の前に崖から車輪ごと引き上げられる場面で、金髪なんて見たことなかったから外国映画は白髪の年寄りが主演するのかと思ったり。しか、し、ウイドマークはかっこよかったなー。鹿革服がよく似合いナイフと手錠の鎖でインデイアンと戦うところなんざ当時小学校3年の子供には強烈な印象を焼きつけ今でも目に浮かんでくる。長いことビデオの発売を待っていたけどやっと米国でリリースされたね。日本版が待たれるけど何時になることやら。誰か知っていたら教えてください。

ボースン
ボースン
2008年1月29日23:04

いらっしゃいませカウポークさま!
映画館でコレをご覧になられたとは、なんと羨ましい。私など、スクリーンで見れたウィドマーク・ウェスタンは、「大西部への道」だけなんですよ〜(^^;)

それにしても、この映画のウィドマークはホントに、若い連中を率いて…って状況もあって、一人勝ちなカッコよさですよね。とにかく身ごなしが俊敏で♪
『コマンチ』を名乗りつつ思いっきり金髪!というのも一種ミスマッチな新鮮さがあってますますヨイです。
いやはや、日本のメーカーも、もう少し彼の西部劇を出して欲しいですよねえ。ノワールばっかりじゃなくて(悪役ばっかだもん)。

nophoto
渡辺哲男
2008年4月18日13:29

遠い遠い懐かしい西部劇です。
渋いリチャードウイドマークの勇姿をみたいものです。

ボースン
ボースン
2008年4月18日22:14

いらっしゃいませ渡辺さま☆
遠い時代かもしれませんが、リアルタイムで大好きです。DVDの映像は嬉しくも鮮やかで、古さなど全く感じさせません(笑)
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